コロナ禍における学校図書館
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、学校図書館がどのような活動や対策を行っているのかヒアリングしました。(2021年秋実施)
☆石狩管内 中学校(全校生徒数 約400名)
ヒアリング協力者:学校司書
ヒアリング日:2021年8月23日
〇図書館の利用状況について
・2020年の休校期間中は、図書館も休館していたが、学校司書は出勤していた
・休校明け2020年6月からは開館したが、感染者が出た時に学年を越えて拡大させないため、利用の多い昼休み利用は、一学年のみが使えるよう学年ごとにローテーションで利用してもらっている。放課後は制限を設けずに開館している
・休校明けの2020年6月から1カ月程度は、これまで図書委員が担当していたカウンター業務を、学校司書が代わりに担当した
・学校図書館の運営方針等がないため、新型コロナウイルスへの対応は教頭や教員と相談しながら、その都度状況に合わせて利用や制限について決めている
〇図書館での活動について
・2021年春に初めて学校図書館のオリエンテーションを実施した。実施については、パワーポイントにまとめ、給食時間中に各教室でテレビ放送した
・
〇利用する生徒の変化
・ふらっと図書館に立ち寄る生徒が減った
・貸出冊数が微減した
〇その他
・デルタ株対策についての注意事項や対策などが、自治体教育委員会から知らされておらず、どう対応したらよいか考え中
=新型コロナウイルス対策として、学校図書館内で実施していること=
・羽海野チカさんのコロナ対策(手洗いの呼びかけ)ポスターを館内に掲示して注意喚起している
・マスク着用
・距離を保つ
・館内では話をしない
・カウンターには飛沫感染防止シート(手作りのビニールカーテン)を設置
☆石狩管内 小学校(全校児童数 約500名)
ヒアリング協力者:学校図書館有償ボランティア(司書)
ヒアリング日:2021年8月25日
〇図書館の利用状況について
・休校期間中は休館し、すべての活動を休止した
・休校明けの2020年6月以降、開館時(中休みと昼休み)は、一学年のみが使えるよう学年ごとにローテーションで利用している。放課後は原則閉館しているが、利用できると勘違いした児童が来館した場合のみ、例外的に閲覧利用のみ対応している
・館内の閲覧用の机とイスを撤収したので、授業で図書を利用したい場合は、館外に持ち出し教室で閲覧している
・カウンター業務は図書委員が担当していて、これまでと違ったやり方(声を発することなく貸し出しができるやり方)に変更した
・新型コロナウイルス対策で必要な対策(館内利用の前後の手洗いや利用できる日にちの制限など)によって、児童が図書館を利用できる時間が減ってしまい、休み時間になるとカウンター前には本を借りたい児童の列ができ、時間が足りず対応しきれていない
・貸し出しの列に並んでいる最中にチャイムが鳴ってしまい、元の棚ではなく近くの棚に本を戻すことが多々あったため、本棚が乱雑な状況が続いている
・児童の中には、借りることをあきらめて、閲覧のみで済ませる児童もいる
・図書館で入室前後の手洗いや図書館内での本の閲覧禁止、本の閲覧は廊下の距離を確保しておいてある椅子で行う、これまで貸出は生徒自身の名前と所属を言ってもらっていたがカードを提示してもらうやり方に変更、貸出の列に並ぶときに距離をとれるよう床にマークをつけるなどを行い、工夫して開館していた
〇学校図書館の活動について
・休校明けの2020年6月~2021年3月までは、学校図書館の管理や運営の大部分を担当していた有償ボランティアが医療従事者と同居していたため、学校から活動自粛の要請があり、児童と接点を持たない17時以降にしか活動できなかった
・有償ボランティアが担当していたこれまでの活動は、図書館担当教員のみでは対応しきれなかったため、PTAスタッフ4名がお手伝いに加わり、本棚の整理や蔵書点検、利用に関する児童からの要望などに対応した
・コロナ後は、読み聞かせ(月1回実施)、おはなし会(夏秋冬に各1回実施)、ブックトークを中止している
・2021年度に入ってから、1度だけブックトークを行った
・カウンター業務は変更なくこれまで通り図書委員が担当した
(2020年6月から2021年3月までの有償ボランティアの活動について)
・休校明けの2020年6月からは、17時に来て本の修理や寄贈本の受け入れ、本棚の整理、必要な書類の作成などをおこなっていた
・2020年4月~2021年3月までの学校図書館便りは、休刊した
(2020年6月から2021年3月までのお手伝いに参加したPTAスタッフの活動について)
・PTAの作業がある際に学校図書館に立ち寄り、本の整理や修繕などを行った
・有償ボランティアからアドバイスを受けながら、学校図書館オリエンテーションや蔵書点検に対応した(お手伝いに参加したPTAスタッフは、過去に図書館のボランティア活動に参加した経験があったので蔵書点検にも対応することはできたが、対応には苦労した)
=コロナ対策として図書館内で実施していること=
・図書館に入室する前後の手洗いの徹底
・図書館内での閲覧禁止
・図書を閲覧する場合には、廊下に置かれたイス(間隔をおいて設置)で読む
・カウンターにはアクリル板を設置
・貸し出す際に声を出さない
・換気
・貸出の列に並ぶ際には足跡マークに沿って並ぶ
・開放司書は児童と接点を持たない
・学年ごとにローテーションで利用する(1回の開館で一学年のみ利用可能)
・スタッフ全員検温を行い、健康調査票を提出する
・返却された本の消毒はせずに、そのまま棚に戻す
☆宗谷管内 中学校(全校生徒数 約50名)
ヒアリング協力者:司書教諭
ヒアリング日:2021年8月27日
〇図書館の利用状況について
・休校期間中は学校図書館を休館した
・コロナ前と後での生徒の利用状況に大きな変化はない
〇学校図書館の利用について判断する基準について
・学校への通達や町立図書館の方針に準ずる
☆胆振管内 小学校(全校児童数 約800名)
ヒアリング協力者:学校司書
ヒアリング日:2021年9月1日
〇図書館の利用状況について
・自治体や学校などに新型コロナウイルスの対策のためのガイドラインなどがないため、職員同士で相談しながらできることと制限することを決めている
・休校明けの2020年6月以降、毎日開館(中休みと昼休み)しているが、一クラスのみが使えるようクラスごとにローテーションで利用している。そのため、児童は3週間に1回のペースでしか利用できない
・図書館を利用できる日に学校を欠席した児童は、別日に利用できるよう調整している
・館内での閲覧は禁止している。借りる本を選ぶ程度の閲覧は禁止していない
・本の返却は、ブックカートに返却するようにしている。1年生のみ、教室の場所の関係で、校内に設置しているブックポストに返却するようにしている
・コロナ前後で、授業での利用に大きな変化はない。館内で授業をする場合には、手指消毒や十分な距離の確保、換気するなどの対策を行っている
〇学校図書館の活動について
・休校期間は、蔵書点検を行った。蔵書点検は、図書ボランティアに参加してもらっているが、休校期間はボランティアが校内に入れなかったため、教員に参加してもらった
・図書委員の活動は通常どおり活動しているが、図書館の利用を促進するためのイベントなどは実施を控えている。昨年は、個人単位で参加できるクイズを実施した
・図書委員会の活動は、カウンター業務(4~6学年利用時の貸出処理)、書架整理、館内の掃除、貸出の列の整理(床に貼ってある足跡マークに沿って並ぶよう利用者に声かけ)
・図書館オリエンテーションは、朝の時間に校内放送を使って実施した。パワーポイントを各教室のテレビに映し出しながら、説明のアナウンスを入れて実施した
・これまで図書ボランティアが読み聞かせを行っていたが、コロナ後は自粛している。今年度に入ってから、学校司書が大型絵本を使い低学年向けに読み聞かせを行った
・公共図書館が休館で資料を取り寄せられなくなり、授業支援のための資料は館内にある本だけで対応している
・本を手に取ってもらうための工夫やはたらきかけは以前のようにできなくなっている。今は装飾やPOP作り程度のはたらきかけを行っている
=コロナ対策として図書館内で実施していること=
・手指消毒のための消毒液の設置
・図書館内での閲覧禁止
・換気
・貸出の列に並ぶ際には足跡マークの上に並び、ソーシャルディスタンスを確保する
・学年ごとにローテーションで利用する(1回の開館で一クラスのみ利用可能)
・返却された本の消毒はせずに、そのまま棚に戻す
・棚など児童が触れやすい場所を消毒する
☆胆振管内 小学校(全校児童数 約350名)
ヒアリング協力者:学校司書
ヒアリング日:2021年9月1日
〇学校図書館の利用について
・休校期間後は通常通り開館しているが、館内閲覧を禁止し、混雑してきた時には入り口で待ってもらっている
・館内での閲覧は禁止している。借りる本を選ぶ程度の閲覧は禁止していない
・授業で利用する場合には、十分な距離を保ち換気を行って実施している
〇学校図書館の活動について
・休校期間中は、電算化のための準備作業に取り組んだ
・2021年度から図書館便りはメールで配信する予定
=コロナ対策として図書館内で実施していること=
・図書館内での閲覧禁止
・換気
・貸出の列に並ぶ際には足跡マークの上に並ぶ
・返却された本の消毒はせずに、そのまま棚に戻す
・棚など児童が触れやすい場所を消毒する
☆釧路管内 全校生徒数約450名
ヒアリング協力者:学校司書
ヒアリング日:2021年9月8日
〇図書館の利用状況について
・休校前の3月に春休みの貸し出しを行い、休校期間明けに返却してもらった
・コロナ前後で大きな変更はない
〇図書館の活動について
・2020年春の休校期間は蔵書点検や配置の見直し、教務の仕事など、通常通りで特にコロナの影響は受けなかった
・オリエンテーションや授業での利用も制限を設けずに実施している
・教員がコロナの感染に配慮して、クラス全員を学校図書館に連れてきての授業展開はなくなった。授業で資料が必要な場合は、クラスのなかでグループ分けをして、グループ単位(4名程度)で利用している
=コロナウイルス対策として実施していること=
・返却された本を消毒(消毒液を吹きかけた布でふき取って消毒する、インフルエンザ対策としてコロナ前から実施していた)
・来館者が10名を超えたら入館を制限
・閲覧席が密集状態にならないよう、距離を開けて配置する
・窓を開け、館内にサーキュレーターを設置して換気する